★「漫画家」と「経費」の現実
前回の「漫画家とお金の話(収入編)」に続いて、今回は漫画を描くうえで出ていくお金、「支出」についてお話ししていきます。
漫画を描くためには「経費」が多くかかります。
「収入-経費=手取り」となるため、経費がいくらかかるのかを知ることは非常に大切です。
支出は大きくわけて、開業するときに画材や環境を整えるための「初期投資費用」と、漫画家として描きつづけていくためにかかる「ランニングコスト」の二種類あります。
簡単にたとえると、
ひとり暮らしをはじめるときにそろえる「家具」や「家電」が「初期投資」。
住みつづけるためにかかる「家賃」や「電気代」などが「ランニングコスト」です。
漫画家の支出例
【初期投資】開業のときにかかるお金
(1)画材(アナログ作画の場合の例)
【必須】
・ ペン先 (1本 80~100円 ※複数必要)
・ ペン軸 (100~500円)
・ インク (500~700円)
・ ミリペン (1本 200~300円 ※複数必要)
・ 修正ペンorホワイト (100~2000円)
・ 漫画原稿用紙 (40枚入りで500~600円)
・ 定規(直線、雲形) (直線…100~500円、雲形…400~1000円)
・ スクリーントーン (1枚300~500円 ※複数必要)
【あった方がいいもの】
・ トーンナイフ (500~600円)
・ トレース台 (5000~10,000円)
・ 下書き用水色シャーペン (100~500円)
計 約10,000万円~(最低 3000円~)
アナログの良さは、ハードルの低さ。
ほとんどの人が「はじめて漫画を描いたのはアナログ」なのではないでしょうか。
究極、ペンと紙さえあればOKです。
(2)デジタル環境(デジタル作画の場合の例)
【必須】
・ パソコン (4万円~)
・ ペイントツールソフト (月額…500円、DL版…23000円 ※フリーソフト有)
・ ペンタブレット (分離型…5000~10,000円、液タブ…80,000円~)
【あった方がいいもの】
・ 複合プリンター (5000円~)
計 約45,000円~(最低 5000円~)
初期費用で見ると、デジタルはどうしてもお金がかかります。
しかしデジタルの良さは、一度環境を整えれば追加でかかるお金が少ないこと。
アナログの場合は、画材が合わなかったり、無くなったら、その都度買い足さなければいけません。
一方のデジタルですが、ソフトには多種多様なペン先やトーンが用意されています。
消耗品を買う必要がないので、長い目で見るとコスト削減になります。
また、すでにパソコンを持っている人は、ペンタブレットのみ購入すれば、フリーのペイントツールソフトでも漫画を描くことはできます。
(ただし、プロとして長く描いていくならば有料のソフトは必須)
【ランニングコスト】継続してかかるお金
(1)家賃や光熱費
・ 仕事場家賃
・ 光熱費
(2)消耗品・定額サービス代
・ 画材代(アナログ作画の場合)
・ ソフトやクラウドサービス定額払(デジタル作画の場合)
(3)人件費
・ アシスタント代(交通費含)
・ 食事代
(4)不規則な支出
・ 資料代
・ 出張費
・ 交通費
ランニングコストは、環境に応じて大きく異なるので一概に数字は出せません。
ただ、アシスタント代は漫画家の支出の中でも、もっともお金がかかるところです。
連載作家さんの中には、アシスタント代だけ原稿料を超えて赤字が出てしまうようなケースも。
ただ、近年では作画もデジタル化が進み、アシスタントを在宅で雇うデジアシも増えてきています。
要はおたがい自分の家にいながら、スカイプなどで指示ややりとりをしながら作業を手伝ってもらうやり方です。
直接指示ができないことや、勤怠管理の難しさなどデメリットはありますが、アシスタントに直接来てもらうことをやめれば、交通費の節約、仕事場の面積を狭くして家賃の節約ができるメリットもあります。
以上、漫画家の支出について簡単にお話ししました。
お金の話になると、つい収入の方に目がいきがちですが、
「仕事」として漫画家を選ぶ以上は、出ていくお金の方にもしっかり目を向けるようにしましょう。