★そもそも「画力」ってなんなのか?
「画力」というのは、簡単にいえば絵を描くための技術、テクニックのことです。
絵に力があるかどうか。あくまで技術の話。
「絵を描く才能」という意味ではないので注意しましょう。
そして、技術というのは、訓練で身につけることができます。
たとえば、「和菓子職人」になりたいと思った場合、弟子入りをして必死に修業に励んでも、一人前になるまで10年を要するといわれているそうです。
もちろん和菓子職人にはオリジナルの作品を生み出す創造性や芸術性も求められますが、10年間一生懸命修行すれば、ある程度の水準を越えた技術は身につくということです。
これは、漫画における「画力」にも同じことが言えると思います。
画力は頑張れば頑張った分だけ、必ず向上するものです。
10年間骨身を削って修行をすれば、間違いなくプロレベルの絵を描けるようになります。
(もちろん、努力の方向が正しかった場合に限りますが……)
才能がなければ、泥臭くやるしかありません。
「自分に才能がないと気づいてからが本当のスタート」なんて言葉もあるくらいですので、絵が上手くなるには、コツコツ、真面目に、ひたすら描く。それがプロになるための技術を身につける王道であると言えます。
★新人に求められるのは「画力」か、「ストーリー」か
新人賞などの講評を読むと、
「テーマ・キャラクターが斬新」 「ストーリーがよく練られている」 「後半の盛り上げに工夫がほしい」
などなど、比較的内容に関する言及が多く見受けられます。
なので新人賞を目指す人は、「よし、誰も思いつかない斬新で個性的なストーリーでインパクトを残そう!」と意気込むことも多いかと思います。私もそういうタイプで、いつも「これまでにない斬新な設定」を必死に考えていました……(笑)
しかし私の経験から申し上げると、新人賞で求められていることの8割は画力です。
あとの2割は当然、内容(ストーリー)なのですが、これは「物語の構造・つくりかた」を理解できているかを見られていると思ってください。斬新さ、設定の面白さは、特に少女漫画の新人賞においては、さほど重要視されていないと言えます。
究極、画力さえあればプロになれると言っても過言ではありません。
もちろん、プロになるより「プロでありつづける」方が何10倍も難しいですが……。
絵がどうしても上手くならず、「自分はストーリーで勝負したい」と思っている方は、思い切って小説家やシナリオライターに転向した方がいいように思います。物語を表現する方法は他にもたくさんあります。
そんな中からあえて「漫画」という表現方法を選ぶからには、「絵だけで勝負できる技術」を生涯かけて磨いていく覚悟が必要です。
人並み以上の画力さえあれば、いざというときにイラストレーターやデザイナーに転向という道も選ぶことが出来ます。
とにかく、悩むより迷うより、絵を描く。
その努力は決して無駄にはなりません。